行政書士になるずっと前、事務長と呼ばれるようになってから数年のできごとについてです。もう10年ほど前になる話なので、時効かなと思って書きます。
態度が急変する「お客さま」
今も兼業で仕事している家業の自動車電装品修理販売業でのできごと。あるご依頼を受け、作業を終えてお車を戻した後に請求書を送付しました。すると、突然「高すぎる!おかしいだろう!!」とごね出しました。
当時、旧車関係の雑誌に弊社のデモカーや現社長を掲載していただいていました。その「お客さま」はなぜかそのひとつの出版社に電話をし、当時の編集者さんに「間に入って話をつけろ」と言い出したのです。まさか、うちで請け負った仕事の依頼主がそんな迷惑をかけているとは思わず、大変腹が立ちました。
その人はなにを思ったのか、その雑誌に掲載されていた弊社の同業他社さんにも電話をかけて金額の妥当性を問うたそうです。まったくもってわけがわかりませんでしたが、「その業者も高いといっていた」と連絡をしてきました(ちなみに、その業者さんにはこちらからも連絡を取り、「一般論として妥当だと思いますと答えました」とお聞きしましたので嘘です)。
「第三者に判断してもらいましょう」
私はすぐに債務不履行だと先方に伝え、支払いを求めました。

高いんだよ!ぼったくりだろ!払わないからな!

いったい何を根拠におっしゃってます?
他のお客さまと同等の請求をしておりますが

もっと安くしろよ!おかしいんだよ!
\カッチーン/

では出るとこ出て第三者の判断を仰ぎましょう
今から簡易裁判所行って訴状出してきます
ここから先は裁判所でお話ししましょう

わかりましたよ!
払えばいいんでしょ払えば!!!!(怒)

じゃあ全額きちんと払ってください
最終的には全額の支払いを受け、この件は終了しました。途中、先輩である弁護士の方にも助言とお手伝をしていただきました。その節は大変お世話になりました!
代金回収ができずに困ったときは
少額訴訟
訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所が取り扱います。140万円を超える場合は地方裁判所が取り扱います。ちなみに、簡易裁判所で代理人となってくれるのは弁護士と認定司法書士です。行政書士は代理人になれませんのでご注意ください。
なかでも請求する内容がが60万円以下の金銭支払いの場合、「少額訴訟」という方法が利用できます。これは、原則1回の審理で判決が言い渡されるためスピーディーな手続きといえます。私が利用しようとしたのはこの手続きです(正直、ちょっとやってみたかったですね)。
支払督促
他にも、申立人(支払いを請求する人)が申し立てた内容をもとに裁判所の書記官が金銭支払いを求める支払督促という方法も利用できます。これは支払いを請求した相手が異議申し立てをしなければ判決と同じ法的な効力で支払いを命じてくれます。
支払督促の場合は、
- 貸金、立替金
- 売買代金
- 給料、報酬
- 請負代金、修理代金
- 家賃、地代
- 敷金、保証金
こういったものについて請求するのに利用できます。
この支払督促は、裁判所に出向く必要がないこと、裁判所に納める手数料が訴訟の半分で済むこと、申立人の申し立てのみで内容を審査してくれること、それでもなお支払ってくれない場合は「仮執行宣言付支払督促」を発付してもらって強制執行を申し立てることができます。この方法は多くの方に利用されているようです。
くわしい内容は政府広報のこちらのページをごらんください
→「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存知ですか?
民事調停
その他に、裁判所の調停委員会のあっせんをうけて、当事者による話し合いで解決を図る方法があります。調停で合意された内容は、支払督促同様、判決と同じ法的効力が生じます。
もっとも、これは話し合いで円満解決を図れる見込みがある場合に使える方法といえ、結果的に不調になれば民事訴訟に発展する場合もあります。利用はケースバイケースといったところでしょうか。
少なくとも、弊社では採用しない方法といえます。
民事訴訟
最後は王道(!)の民事訴訟です。裁判官が法廷で審理をおこない、最終的な判断は判決で紛争解決をする方法です。この場合は弁護士に代理人となってもらう必要があると私は考えます(本人訴訟は困難だと思ってください)。
「代金回収が難しい!」と思ったときに使える方法を紹介しました。問題を解決するため、いくつかの方法があると知っていれば自分で動くことができます。もっとも、それも難しいとなれば、弁護士さんに相談してみるというのもひとつです。
中小零細企業や個人事業主の方へ
裁判所のホームページはあんまりみる機会ないと思うんですが、こういった手続の解説や提出書類のひな形なんかも掲載されています。統計資料なども掲載されているので、興味本位で覗いてみるのも面白いかもしれません。→裁判所ホームページ
弊社も過去に支払いでごねられたこと、脅しのようなことを言われたこと、踏み倒されそうになったことがあります。しかも、今やインターネット時代。こちらがなにひとつ悪くなくても、虚偽のクチコミをされることもありますし、直接暴言を吐かれたり嫌味を言われたりもします。営業妨害ではないのか?と思うことも度々あります。
あまりそういったことを表立って書いたり話したりしたことはありません。しかし、弊社の同業他社さんや事業主さんと話す中でもいろんな迷惑を被ってきた方や被害に遭ってきた方がいらっしゃることを目の当たりにして「役に立てる内容だったら書いてみよう」と思い、今回この記事を書きました。
プロ意識を持って仕事をしている多くのみなさんのほんの少しの手助けになったら幸いです。
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