PrimeVideo「法廷遊戯」ネタバレ

映像

わりと最近の作品だったような気がするのですが、「法廷遊戯」がPrimeVideoの新作に上がっていたのでさっそく鑑賞してみることにしました。原作は未読です。ちょっと自分の立場からも含めて思うところを感想とともに書いてみようと思います。

壮大にネタバレを含みますので、まだ観ていない方はご注意を。

舞台は…ロースクール?

まず、これはかなり個人的なことなのですが…私が元ロー生です。そのため、冒頭シーンの自習室(?)にものすごい違和感がありました(笑)あれは個人の自習室なんでしょうか。共同自習室にしか見えないんですが、まぁ演出なんでしょうね。さすが映画ということで。

いきなり始まる「無辜ゲーム」

突然始まる「無辜ゲーム」という名の…私には吊し上げタイムという感覚でした。あれを裁判という体で気晴らしゲームといった意味合いでおこなうのはかなり悪趣味だなと。洞窟みたいなところでろうそくつけて裁判官役のようなことをしているのがこのゲームの主催者・結城馨(北村匠海さん)。彼は在学中に司法試験に合格したという優秀なキャラクターです。受かったのにローに残る意味…修習行かないの?という疑問はさておき。

一発目の「無辜ゲーム」は席を外していた間にテーブルのうえに置いてあったスマホを誰かに落とされてバキバキに画面が折れた学生が被疑者を名指しするといったもの。バキバキ画面の被害者学生・緒方賢二(戸塚純貴さん)の演技がちょっと濃いというか、ねちっこい。そういう指示だったのかなと思いますが、胸焼け感はありました。誰もが無罪ということで解散。こんなことしてたらクラスの空気最悪だろうなという印象です(そんなことしなくてもローの空気なんか淀んd…やめます)。

翌日(?)、登校した直後に本作主人公・久我清義(永瀬廉さん)同級生の織本美鈴(杉咲花さん)から教授から呼ばれていると声をかけられる。奈倉教授(柄本明さん)に呼び出された久我は、「無辜ゲーム」について聞かれるものの、「よく知らない」と適当に受け流す。すると、自習室から離れている間に久我を中傷するビラが。その中傷内容というのが過去の写真を貼られているとともに『久我清義は殺人未遂犯』といったもの。そこで久我は名誉毀損として「無辜ゲーム」をひらくことを要求。開催されることに。

すると、そこに奈倉教授が見学に来る。そんななかで久我は朝に声をかけてきた織本を証人に指名。これ、現実だったらロー側に「そんな時間あるならいいから勉強しろ!」と言われるか完全に無視されるかどっちかだろうなぁ…と。試験に関わること以外で特に法務省から目をつけられなければそんなに問題にならない気はしますが、そもそもこんなことするロー生いたら私は泡を吹きます(白目)

そして、ビラまきの被疑者が発覚。まさかの緒方賢二。そして彼は久我に「明日学校をやめる。続けたって司法試験に合格するわけじゃない」と視聴者であるこちらをこうも抉り取ってくるようなコメントを残して去っていきます(涙)

久我と織本の関係

実はこのふたり、同じ施設育ちの同級生でした。その施設のなかで起きたこと、それが久我が殺人未遂を犯したという事件でした。ローのなかで配られたチラシはこの事件のことでした。しかし、個別に同じ施設育ちの織本にもこのチラシと脅しがきていました。ローのなかではあまり関係のないようなふりをしています。

ここで出てくる「事件」の原因は直接は描かれていないのですが、織本に対する施設運営者の性虐待というものを暗に示していました。この事件で思い出したのは、漫画の「僕の名前は少年A」です。被害者を守るために、加害者に害を加えてしまうというもの。ただし、「僕の名前は少年A」と違うのは「法廷遊戯」は被害者の織本と助けるために加害者になった久我がお互いを守り合うという側面です。ある意味運命共同体。

加害者となった久我は、織本を守るためだったことや自分自身が暴力を受けていたことにより少年院送致を免れました。そのときお世話になった弁護人・釘宮(生瀬勝久)に「これから生きていくためには知識が必要」といわれ、久我は弁護士を志すことに。そして、織本にも「一緒に今の環境から抜け出そう」と誘い、彼女もそれを了承。そしてローに進学したということでした。

そして舞台は法廷へ

本作は時系列が若干前後しながら進んでいきます。かなりあっさりと久我と織本は司法試験に合格。久我は晴れて弁護士となるシーンがありますが、織本にそのシーンはなし。なんでですかね。ちょっと腑に落ちませんでした。

呼び出された先で

久我は、ローを卒業したのち研究者となっていた結城から「最後の無辜ゲームをするから来てくれないか」と呼び出されます。わざわざ専門職過程のローを出て研究者ってなかなか…まぁそれは置いておいて。

約束の時間に結城に会いに、またあの洞窟のような場所を訪れる久我。すると、血だらけの織本がそこに立っていました。足元には息絶えた結城が横たわっています。織本は言います。「セイギ(久我のこと)、私を助けて」そこから本当に最後の「無辜ゲーム」(?)が始まります。

久我の弁護活動

織本を弁護するため、せっかく就職していた事務所をやめて学生時代から住んでいるアパート(?)に個人事務所を開く久我。新人ですごい勇気というか…顧問とかないと厳しすぎませんかね。引き継ぐほど事務所にいたんでしょうか。定かではございません。

正直、ここからの弁護活動(接見)や期日前整理手続のあたりは間延びしているというかなんか緊張感が感じられないシーンが続きました。突然証拠として出される映像もそうなんですが、沼田(大森南朋さん)もうちょっと効果的に使えなかったんでしょうか…。あれ本当にただの鬱陶しい嫌味なおじさんになっていて、しかもネット技術駆使できるのに手相で小銭稼いでるとかなんかこう…むずむずします。存在が勿体なさすぎる。

そういえば、結城の実家(?)にお線香をあげにいった久我が仏壇の前に座ったまま結城のおばから結城の話を聞くシーンの永瀬さんの表情はちょっといただけなかったです…なんていうんだろう。悪になりきれない久我の人間性はわかるんですが、語弊を恐れずに言えばその覚悟で弁護士になるの?と。弁護人として折れちゃわないか心配になるばかりでした。

事件の真相

元も子もないんですけど、この事件の首謀者は結城でした。というのも、警察官だった結城の父親は冤罪を苦にした自殺という非業の死を遂げているのですが、その原因となったのが織本による痴漢の冤罪、結城の父親を階段から落とした久我のふたり。しかも、結城は階段から落とされる瞬間を目撃し、直後に走り去る久我とすれ違っていました。結城はふたりに対する復讐をおこなうためにこの事件を起こしたということです。うーん、同じローに同じ学年で揃うって狙ったんでしょうか。用意周到?

結果、織本は結城が撮影していた映像のおかげで無罪となるのですが、「実行行為の有無」の部分ははっきりと映像として映ってないんですよね。で、結局織本は久我を助けるために見えない部分で刺してました。ぐりぐりと。あんなぐりぐりやったら証拠写真の刺傷ともちょっと違いそうだなぁ〜とか思いながら。

久我は最後の織本との最後の接見で弁護士バッチを接見室においていきます。ここでふたりは決別するんですが、このシーンは杉咲さんがいなければ本当にあっさり塩味で終わったんだろうなぁと思いました。久我は己の罪を自覚し、弁護士を辞めるようなことを言っていましたが、ラストシーンでもどうなったかははっきりしません。なんだかすっきりしないラストでした。

感想

だいたい1時間半程度の長さの短めな作品です。全体的に暗い…後ろ暗い過去のある主人公というのはわかるんですが…いかんせん暗い。なんか全部暗い。杉咲さんは二面性を演じ分けていたので、そういう意味ではいちばん輝いていたかなぁという感じです。そして、おそらく織本の方が久我よりずっと弁護士に向いてるな…。

観ていてあんまり感情が動かされるということもなく、1クールとまではいかなくても特別企画の2夜連続放送的なスペシャルでも成立したんじゃないかしらといった感想です。映画館に行ってまで観るかと聞かれるとちょっと厳しいかな。配信されているから観れて良かったかなと思います。

全体的にあっさりしているので、2時間ドラマミステリーが好きな方にはおすすめします。

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